2010年12月25日土曜日

インド・ダイヤモンド鉱床と「小公女」物語

インド・ダイヤモンド鉱床と「小公女」物語

クリスマスシーズンになると活気付くダイヤモンド市場についてのリポート。
バーネット女史「小公女」ではインドダイヤモンド鉱山の物語が背景になっている。このダイヤモンド市場は007「ダイヤモンドは永遠に」でデビアスのシンジケートの実情が一部明らかにされているが、人工的に吊上げた国際市場で日本だけが一人高の状況である。以下、見てみよう。

*バーネット 「小公女」日本ではアニメーション化され、タイトル「小公女セーラ」 登場人物紹介
(あらすじ)
ダイヤモンド鉱山。インドにわたったセーラの父クルー大尉が、その採掘に命を賭ける。手紙の中に、このことばを見つけたセーラは「まるでアラビアンナイトみたい」とドキドキしてしまう。地面の中の迷宮のような道を想像してみる。壁にも屋根にも天井にも、キラキラした宝石がちりばめられていて、大勢の坑夫が重いつるはしで、その光る石を掘り出している・・・
しかし、ダイヤモンド鉱山はなかなか見つからず、やさしい父は、失意のうちに遠いインドで命を落としてしまいました。
それから2年ほどして、父の友人がセーラを探し出します。ダイヤモンド鉱山が見つかり、セーラには莫大な財産のあることを伝えるために。
(時代背景)
産業革命期に書かれた本作品で、登場する人物像に当時の仕事、民族の持つ社会階層が表現され、興味深い。
浮き沈み激しい主人公の父は、インドでダイヤモンド鉱山経営(鉱山業は富の象徴)
誇り高い女性の生き方を象徴するマリーアントワネットの贅沢さに憧れる市民層(貧富さの拡大)
富を目当てに近づき人を騙す弁護士(ブローカーの社会暗躍)
イギリスへインドから連れてこられた英語を話せない召使(言葉による主従コミュニケーションは当時は不要、家畜の様に命令だけ。奴隷制の現実)

セーラ・クルー
 主人公の女の子。インドで生まれてロンドンに留学に来た。誰とでも分け隔てなく親切にする事ができ、学院の人気者であった。無一文になった後も「マリー・アントワネット」のように誇りを失わずに生きようと決心する。
ラルフ・クルー
 セーラのお父様でイギリス人。インドで鉱山を経営していたがダイヤモンド鉱山を発見したという噂が流れた途端、熱病で急死してしまう。
マリア・ミンチン(声・中西妙子)
 ミンチン女子学院の院長先生。金の事しか頭になく、大金持の娘であるセーラに寄付してほしいばかりにゴマをするが、セーラが無一文になった途端、手のひら返したようにセーラをこき使い、またいじめる。

バロー・アンド・スキップワス
 ラルフの雇った弁護士。セーラがロンドンで留学する手続きを取ってくれるが、セーラが無一文になったとわかった途端に、セーラの家財道具一式をすべて取り上げてしまう。

ラビニア・ハーバート
 ミンチン女子学院で学んでいる生徒。セーラよりも3つ年上。お父さんがアメリカで油田を経営しておりミンチン女子学院の代表生徒でもある。自分より裕福で恵まれている環境にあるセーラが憎くてたまらず、セーラが無一文になるとここぞとばかりにいじめたおす。
アーメンガード・セントジョン
 ミンチン女子学院で学んでいる生徒。何をやってもドジでいつもラビニアたちからいじめられている。セーラがとても親切にしてくれたので、セーラが無一文になってもセーラの事を励まし続ける。お父さんは大学の教授をしており、いつもプレゼントは本と決まっている。

ラムダス
 クリスフォードがインドから連れて来た召し使い。インド人の召し使いの中では唯一英語が話せる。とても親切でセーラと仲良くなった後、何かとセーラの事を気にかける。
トム・クリスフォード
 ラルフの親友でインドで一緒に鉱山を経営していたがラルフと共に熱病にかかってしまい、ラルフは死んで自分は生き残ってイギリスに帰って来るが心の病気を持ってしまった。ラルフの一人娘の事を思っていつも心を痛めている。


(インドのダイヤモンド鉱床)インドの鉱山は川床砂礫(二次鉱床)で、その中から収集、初期のダイヤには今ほどの価値はなかったようで、1475年、ベルギーのルドウィグ・ヴァン・ベルケムが現代に通ずる研磨法を発明してから貴重視されるようになる。
それまではエメラルドが宝石の王様だった。コ・イ・ヌールやホープダイヤモンドはインド産。
所在 : Madhya Pradesh
(マディヤ・プラデーシュ州)
産物 : ダイヤモンド
権益 比率 NMDC 100%
Majhgawan鉱山はインド中央部の州であるマディヤ・プラデーシュ州北東部にあるダイヤモンド鉱山。
インドの国営企業NMDCが所有。
Majhgawanダイヤモンド鉱山は2007年には約1700カラットのダイヤモンドを生産しており、2008年は生産を行っていない。

(ダイヤモンド市場とメジャー進出:引用)
「リオティントは西オーストラリア州の「アーガイル鉱山」の拡大に830m$を投資、
11年前半から拡張工事に着手、現在の露天掘りを,13年から地下採掘に切り替える、鉱山寿命は19年に延びる、
デ・ビアス.オッペンハイマー会長は”独占は全員の利益である”と宣言した、この言葉はダイアモンドに関する限り、永遠に真実である。
インドと中国を中心とするアジアのダイアモンド市場の台頭がダイヤモンド産業を新しい成長産業に転換するという見通しが生まれ、石炭、鉄鉱石、金、チタン、銅、アルミニウムなど資源関連で世界最大級である、ダイヤモンド後発の、リオティントとBHPの2社をダイアモンド・ビジネスへの積極的な投資へ駆り立てている。
(アーガイル鉱山のキャリア)
 1996年6月、生産量では世界の40%の年間4000万カラットを生産するオーストラリアのアーガイル鉱山がデ・ビアスを通さず,全量を自前で販売する旨宣言した。
アーガイル鉱山産のダイアモンドは平均0.1カラットと小粒で,しかも95%が工業用に分類され、原石の平均単価はカラット当たり8~9ドルという低品位の原石である。
(ただし、一万個に一個の割合で,世界の80%を占めるピンクのダイアモンドを産する。) 
つまり、アントワープやニューヨークなど,先進国のカッティングセンターでは加工しても採算の合わない,したがって従来は宝石用には用いられなかったものである。
ところがアーガイル鉱山は原石の大半を宝石用として直接インドに売ることが出来た。
 1980年代以降、1時間当たりの平均賃金が4セントという低賃金を武器に、インドのダイアモンド研磨産業は急速な発展を遂げた。現在では世界のダイアモンド研磨の個数で80%,重量で70%、金額でも40%と圧倒的な地位を築くに至った。その原動力となったのがかつては工業用に回されていたアーガイル産の低品質の原石の宝石用途への研磨加工であった。
原石はかつてはおよそ20%が宝石用,残りが工業用と分類されてきたが,それは必ずしも原石の質だけの問題ではなく,あくまでも採算を基準にした分類であった。
 現在では原石は、20%の宝石用と40%の準宝石質(カット可能)と残りの工業用途の3種に分類されている。即ち低賃金のインドでのダイアモンド研磨産業の発展によりダイアモンド原石の宝石用途への比率を拡大し、宝石ダイアモンドの供給を急増させたのだ。
 デビアスは、2000/9月に,アーガイル鉱山の38%を有するアシュトン鉱業に対し5.13億豪ドル(約308億円)での買収を仕掛けたのだ。
アーガイル鉱山の最大手株主であるRTZ:リオティント(58%所有)は直ちに6億豪ドル(約370億円)の提示で対抗した。しかし10月初旬デ・ビアスは新たに買収金額を45%増の7.45億豪ドル(約447億円)に引き上げた。 
結局RTZは対抗しきれず、10月11日アシュトン鉱業はデ・ビアスの傘下に入ることとなった。 デ・ビアス社は現在約40億ドル相当のダイアモンド原石在庫を持っていると考えられる。またほぼ同じ金額の預金があると見られる。そのおよそ10%を取り崩してまでアシュトン鉱業を支配しようとする目的は何だろうか
 
BHP(Broken Hill Pty)も同じカナダ北極地域にその名も現地語で獣脂湖を意味するEkatiダイアモンド鉱山の開発にいち早く成功し、1998年、年産200万カラットの生産量にて世界のダイアモンド・ビジネスに参入してきた。 2000年以降は生産を倍増し、以後25年間で1億カラットの出荷を見こんでいる。
この鉱山の原石も平均単価が84ドルとかなりの高品位である、
2002年10月初旬、BHPはしかしEkati鉱山産ダイアモンドのデ・ビアスへの供給契約を年末で打ち切ることにしたと発表した。3年間の販売経験を経て、370万カラットに達している年間生産量の全量を自力で販売する流通網が確立出来た為である。予想された事態であり新聞記事で強調されるような”"デ・ビアスのダイア価格形成力に打撃”などありはしない。デ・ビアスの市場シェアと利益がほんの少し低下し、BHPグループの利益が直接販売する分だけ増えるだけである。
デ・ビアスを持ち株会社のひとつとするアングロ・アメリカンは世界最大の金鉱山を持ち,さらにその傘下アムプラッツ及び資本提携関係にあるロンローと合わせて白金でも世界の過半数を支配している。デ・ビアスグループは、カナダ北極圏、ロシアのアルハンゲリスク地区に単独あるいはロシア政府との合弁等で,それぞれ1000億円近い資金を投下して調査、探鉱と開発とが進行中。

ダイアモンドの需要と供給のバランスは長期的には供給不足になることが明らかだ。
中国とインドの市場とが立ち上がれば,現在の年間1億カラットの生産では明らかに品不足になる。
21世紀の世界のダイアモンド生産の展望については、まず、現在稼動中の鉱山の多くは鉱脈が枯渇して生産が減って行く。ダイアモンド鉱山の寿命は平均して20~30年程度である。
アフリカや、新たに探鉱や開発が進行中のカナダやアルハンゲリスクで等の鉱山の生産とが全て順調に行ったとしても,現在の年間1億カラットの生産水準が減る事はあっても超える事はないと予測されている。 品位の高いアフリカ各地の鉱山を持ち、高品位の原石の50%を押さえるデ・ビアスが今後も市場の価格支配権を維持し続けることも確かである。
http://blog.goo.ne.jp/thinklive/e/c70310dcf9f6a3a6ecafc86b7efe814aTHINKING LIVE シンキングライブ
経済情報サイト 矢野雅雄氏運営よりこの部分引用

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